死ぬ程洒落にならない話を集めてみない? PART10
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私が高校に入学してすぐ、母親が失踪ました。
父が言うには、母にはもう数年も前から外に恋人がいたそうです。
「アイツは父さんとお前を捨てたんだ」そう言ってうなだれる父の姿を見て、
これからは私が母親の分まで父を大切にしようと決心しました。
しかし、それから家では、奇妙な事が続きました。家全体が何となく、
ゾワッと総毛立つような雰囲気に包まれ、確かに閉めておいた
ドアが開いていたり、棚の上のものが落ちていたりするのです。
そこで私は、「母はもう死んでいるのでは?」と思ったのです。
玄関に置いたままにしてある母の靴を調べ、私の疑惑は確信になりました。
もし母が出ていったとしたら、靴が一足、足りなくてはなりません。
靴は、全部ありました。という事は、父がこの家の中で母を殺した事になります。
(何で?どうして?)父を問い詰めたい衝動にかられましたが、やめました。
母を亡くして、父まで警察に捕まってしまったら、私は一人ぼっちになります。
父は、母を愛していました。あんなに愛してくれていた父を裏切ったのなら
殺されたとしても、母の自業自得のように思えたのです。
(気付かなかったふりをしていよう)そう決心しました。
しかし、奇妙な現象は続いていました。ある日、私が寝ていると、ピト・・ピト・・と
誰かが家を歩き回る音で眼が覚めました。父の足音ではありません。
そして、ピト・・ピト・・という足音がだんだん近付いてくるのです。
「来ないでくれ、来ないでくれ」そう念じながら蒲団に潜っていると、その
足音は私の部屋の中にまで入ってきました。生ぬるい呼吸が頬にあたりました。
薄目を開けると凄い形相の母が、私を覗き込んでいました。そして、耳元で
「出・・・て行・・・け・・・」 そう言ったのです。
(こんな家にはいられない)
そう思った私ですが、引っ越そうにも理由を父に言うことが出来ずに悩んで
いました。不思議な事ですが、霊を見るのは私だけで、
父は何も感じていないようなのです。母が居なくなってからというもの、
私の面倒を見る為に在宅の仕事に切り替え、家事をしてくれる父に
「父さんが、殺したんでしょう?」とは聞けなかったのです。
そこで私は何を見ても見ないふりをして、日々を過ごしていました。
あるとき炬燵に入ると、「ガリッ」という音がして、足の小指に激痛が
走りました。何事かと思って炬燵布団をめくると、そこに母が居ました。
炬燵の中で、母が、横になっていました。
台所で料理をしていた父が「どうした?」と声をかけてきましたが、
私は「何でもない。宿題があったの思い出した」と言って誤魔化しました。
「もうすぐ出来るから、居間でやるといいよ」
そういう父の言葉に促され、鞄を開けました。
その時初めて、鞄の底に四つ折になった便箋が入っている事に気付いたのです。
そこには、母の字でこう書かれていたのです。
「真美、逃げて、父さんは狂ってる」
いままで母は、私を逃がそうとしていたのでした。