洒落怖・短編

【洒落怖】貧乏神【短編】

死ぬ程洒落にならない話を集めてみない Part14

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49: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/05/22 07:45

   貧乏神1

私が以前に交際していた男性は、非常に霊感の強い人でした。
ある日その人と、町中を歩いていた時の事です。
交差点で信号待ちをしていたら、彼が「アッ、あの人の鞄・・・」と驚いたように呟きました。
「どうしたの?」
怪訝に思い、私は彼に尋ねましたが、彼は何も答えてくれません。
それでも私は、「一体、どうしたって言うの」と、彼にしつこく尋ねました。
すると彼は、緊張した表情をしながら、こう言ったのです。
「あそこの男が、持っている鞄」
「多分あの中には、沢山のお金が入ってる」
「でも沢山の手が、そのお金をつかんでるんだ」
私は、彼が言っている男が誰なのか、すぐに見当がつきました。
男を見た瞬間、私は背中が寒くなる感じがしたからです。
その時、信号が青になり、男が歩き出しました。
私と彼も、人の流れに沿って歩き始めましたが、男との距離が縮まるにつれ、私の緊張感も否応なしに高まります。
すると彼が、私にこう、ささやきました。
「大丈夫さ」
「でも・・・可哀想だけど、関わり合わない方がいい」
そして彼は、私の手を握り締めたのです。
あんな彼は、初めてでした。
だから私は、思わず彼の顔を見ながら、呆然と歩いてしまったのです。
彼も私の事が心配なのか、私の顔を覗き込んでいました。
するとその時、「ドッ」と音がし、男が私にぶつかったのです。
男はよろめき、すぐに倒れ込んでしまいました。
そして、男の鞄から沢山の札束が飛び出したのです。
私は「すいません!」と男に謝り、札束を拾おうとしました。
すると彼が、「ヨセ!」と大声で怒鳴ったのです。
でも私は、「彼の態度に、男が怒り出すかも・・・」と考えました。
だから私は、慌てて「急いでいたので、すいません」と謝りながら、札束を拾い上げて男に手渡したのです。

 

50: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/05/22 07:46

   貧乏神2

男は札束を鞄に入れながら、「私も前を、よく見ていなかったので・・・すいません」と言い、特に怒っているように見えません。
男はそのまま、立ち去りました。
その時、私は彼が居なくなっている事に気付いたのです。
私は彼に、何度も電話をしましたが、彼は電話に出てくれません。
仕方がないので私は、そのまま一人で家に帰りました。
家に帰ってから気付いたのですが、私は財布を落としたようです。
でも、どこで落としたのか、私には全く見当がつきません。
そこで私は、彼にも話を聞いてもらいたくて、もう一度、彼に電話をしました。
今度は彼も、すぐに電話に出てくれ、すぐに私の家に来てくれる事になったのです。
でも、私の家に来てくれた彼は突然、私に封筒を手渡し、こう言いました。
「愛情は、多くの人を救うけど、お金はもっと多くの人を救うと思う」
「君には、これが必要だ」
彼の手渡した封筒の中を見てみると、数枚の一万円札が入っています。
私は無性に腹が立ち、「何を考えてんのよ」と彼を怒鳴りつけてしまいました。
すると彼は、泣きそうな顔をしながら
「ごめん」
「もう君とは、つきあえない・・・」
と言います。
私が彼と会うのは、それが最後になりました。
その後、私の人生は不運続きで、今では多くの借金を抱えています。
また、不気味な体験も、私はよくするようになりました。
例えば、買い物の代金を払おうとお金を取り出すと、
「お金を、持っていかないで・・・」
と声がし、私の手やお金に沢山の手が、つかみかかってくるのです。
その手の中には、もう一人の私も・・・
もう一人の私は、私を恨めしそうに見ながら「どうして、お金を持っていくの?・・・」と叫ぶのです。
もしかしたら私も、あの人達の仲間になりつつあるのかも・・・。

 

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