死ぬ程洒落にならない話を集めてみない Part14
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寝る前に部屋、天井の四隅を見ると幽霊が現われるというのを昔、友人から聞いたことがある。
そもそも私は霊感とかが強い方でもなく、怪奇現象とかも体験したことがなかったのであまり信じていなかった。
むしろ半信半疑で随分と古い話でもあったせいか、記憶から失せていた。しかし。
昨日は飲み会が会った。
帰宅した私はひどく疲れていて玄関の電気もつけぬまま、常に敷きっぱなしの布団に仰向けになった。
ぐらぐらと意識がおぼつかない。自分でも酩酊してるとわかるほどに息が酒臭い。
湿度の高い部屋のせいで身体が汗ばんでワイシャツが肌に吸い付くけれど気にはならなかった。
私は酔っている時特有の心地よさに浸りながら、ただぼんやりと天井をみつめていた。
不意に、過去の記憶が蘇った。
「寝る前に天井の四隅を見ると幽霊が現われるよ」
あまりの懐かしさにわたしはその友人の顔を脳裏に思い浮かべ、今度電話でもしてみるか、などと
思いながら何かに引かれるように、電気にあてていた視線を外した。
右下、左下、右上と、仰向けになっているため眼球をせわしなく動かしながら、
私はいるはずのないものを確かめるようにゆっくりと視線を巡らす。左上。
一瞬、何かあったらどうしようという思いに喉がこわばった。
しばらく眼をそこから放さずに一度まぶたを閉じて再び電気を見る。部屋の中心には何もない。
やはり何も起らないじゃないかという安堵感に緊張していた身体がほぐれて脱力した。
もう寝てしまおうかと思ったが、大量にアルコールを呑んだせいか便所に行きたくなった。
トイレまでそう距離もないのでわたしはさも面倒くさそうに身体を起こしてトイレに駆け込んだ。
廊下の電気を点けて、トイレの電気も一緒に点ける。わが家の便所の戸は下が微かに開いていて、そこから光が漏れるのがわかる。
景気のいい音とともに体内から排泄物を出す。用を足し、水を流そうとした瞬間。
背後で廊下の床が軋んだ。心臓が跳ねた。私は思わず眼を見開いて硬直した。
何分か、動かずにいた。空気がじっとりと皮膚に絡んで、いやに湿気がわずらわしい。
背後に誰かいたら、いや、いるはずはないのだけれど、万が一幽霊がいたら、と思いながら、
私は、ゆっくりと振り返った。すると、そこには私の恐怖していたものはなかった。
背後には誰もいない。貞子のようなものでも現われたらどうしようかなどと思っていた私は胸をなで下ろした。しかし。
トイレの扉、その下から、誰かの足が見えるのだ。佇んでいる。はっきりと見えた。
赤いマニキュア、おそらくは女性であった。私は恐ろしさのあまりに声も出ず、立ちつくしたまま震えた。
しばらくして、私にこの話題を振った友人を憎んだ。
力が抜けてその場にへたり込み、死んでしまうのだろうかと思いながら、年甲斐もなく膝を抱えて泣いた。
何分そうしていたかもわからない。もしかしたら小一時間は過ぎていたかも知れない。
拒絶のあまり顔を伏せていた私は、ゆっくりと顔を上げた。しゃがんでいるせいで近くに見える扉の隙間からは、何も見えなかった。
それでも出るのが怖かった。戸を開けた瞬間に、何かがあったらと思うと、一晩ここで過ごすのも悪くないとさえ思った。
しかし私はトイレの水を流し、勢いづけて扉を開いた。外には、何もいない。
急いで寝室に戻り部屋の電気を点ける。すると、風が通り抜けた。窓が開いていたのだ。
帰ってきたときは明らかに閉じていたはずだ。湿度の高い空間で、私は冷や汗を流した。
そのあとは怖かったので電気つけたまま寝ました。泥棒には思えなかったんですが、幽霊だったのかも謎。
もう夜中に便所行くのも無理です…。これを教えてくれた友人に連絡をとってみたんですが、繋がらないので…。
彼女に何か悪い事が合って云々、なんてベタなことあるはずないよな…なんて思いながらも少しビビってます。
無駄に長くなってすいませんでした。
部屋の四隅は霊の通り道になってるそうだよ。
だから部屋の四隅は塞がない方がいいんだってサ。