洒落怖・短編

【洒落怖】白い女の子【短編】

645: 白い女の子 2000/12/18(月) 01:42

先日、祖母の葬式のために生まれ故郷を訪れた。
そこは山と畑しかないような、いわゆる寂れた山村だ。
私が小学生の時に両親と市内に引っ越したために脚が遠のき、
さらに大学に通うのに東京に出たため、そこを訪れるのは
実に10年振りだった。

葬式が終わり、一人で子供の頃と少し様子の変わった村の中を
散歩していると、ある家から鋭い鳥の鳴き声が聞こえた。
何かが引き千切られるような、苦しそうな泣き声。
不穏なものを感じた私は生垣を掻き分けてその庭を覗くと、
10歳くらいの小さな女の子がこちらに背中を向けてうずくまって
いるのが見えた。そしてもう一度鳥の鳴き声。
今度は長く響いて、そして弱々しく消えていった。
思わず身を乗り出した私の重みで生垣が音を立てた。
私に気付いて女の子が突然こちらに振り返った。
前髪を綺麗に切り揃えた真っ白な女の子。
その子の右手には、もう動かなくなった小さな鳥の姿が..。
そう。すずめを握り潰していたのだ。

私と目が合うと、その子はすずめをこちらに差し出しながら
歩み寄って来た。口元に笑みを浮かべて。
その異常な光景に恐怖した私は、声を上げて無我夢中で
その場から逃げ出した。

 

646: 白い女の子 2000/12/18(月) 01:42

後から近所の人にその家のことを聞いてみると、その家は
一年程前にその村に引っ越して来た「東京の大学の先生」の
ものだそうだ。村の人とはほとんど交流がないようで、
特に娘のこととなると余り多くを語ってはくれなかった。
しかし私の幼馴染が、その家には精神を病んだ娘がいて
隠れるように田舎に住んでいることを教えてくれた。
「人形のような綺麗な顔立ちの子なのにな。可哀想に。」
そう言って目を伏せていた。

両親の車で村を出るとき、その家の前を通った。
その家の周りだけ重苦しい暗い影に覆われているように感じ、
ふと目をやるとそこには生垣を掻き分けて私を見つめる
おかっぱ頭の白い女の子の姿があった。
あの時と同じように口元に笑みを浮かべて。

あまりの恐怖で声も出なかった。
息も出来なかった。

ただもう全身がブルブルと震え、涙が止まらなかった。
両親が気付いて慌てて車を止めようとしたが、私はとにかく
ここから早く離れてくれとだけ伝えるのが精一杯だった。

東京に戻った今も、時折夢の中にあの白い女の子が現れる。
もうすぐ祖母の四十九日の法要があるが、私はもう二度と
あの村を訪れることは出来ないだろう。

 

649: 白い女の子 2000/12/18(月) 02:01

書いててまた怖くなって来ました。
これで忘れられるかと思ったのに。
こんな夜中に書くんじゃなかった..。

[後日談]
私の大学にまだ40代なのに地方に隠居された助教授が
いるそうです。丁度一年程前に…。
万が一、ということもあるので名前は聞いていません。
知りたくもないです。

 

死ぬほど洒落にならない恐い話を集めてみない?
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