714: 本当にあった怖い名無し 2020/11/06(金) 17:23:06.08 ID:oNZAgxrw0
私は、九州在住の某宗派の現役の僧侶です。
毎日のお勤めと、例えば、
「報恩講」などの法要など様々な法要も行います。
その日時・内容をお知らせさせて頂く為、
不定期ながら、お知らせみたいな書面を作ります。
そのお知らせに、私特有のマークというか印を入れることが
門徒の皆さんとの会議で決まり、
そのデザイン等を決めなくては、ならなくなりました。
需要があれば書こうかとも思ってますが・・・
>>715
>>716
ありがとうございます。
では、続きを
流石に、企画書などは書けても、
デザインは、やったことがないので、
その道のプロの方に、お願いすることになりました。
それが、Hさんです。
私が僧侶の世界に入る前の仕事で、名前は聞いたことがあり、
作品も拝見したことはあったのですが、面識はありませんでした。
こちらの門徒さんに、Hさんが開いている
絵画教室へ通っている方がいらっしゃり、
その方の口添えもあってのことでした。
ご紹介を頂き、顔合わせをし、世間話をしていく内に、
Hさんのご自宅兼お仕事場に、お邪魔することになりました。
お仕事場でお打ち合わせをさせてもらってる時、
少し気になるというか、興味を惹く絵画があり、
壁になんとなく飾ってありました。
木枠のフレームに額装してあり、
グレーの背景をバックに
座った姿勢で、上を向く不思議な動物?生き物。
高貴な雰囲気が、絵から伝わって来る、
天を向くその表情は、優しさに溢れている、
座っている姿勢ながら、尻尾なのか毛なのか
猛々しい今にも動き出しそうに溢れている。
Hさんのオリジナルの絵なのか、
どなたか別の人が描いたものなのか、
その絵画が妙に気になって来て、
印の打ち合わせの途中ながら、質問してしまいました。
何とも言われない、迫る魅力というか、包み込む優しさと言うか」
「え?」
私が感想を言い切ってしまう前に、
Hさんが喰い気味に、まるで感想を遮る様に、言いました。
「ご住職、はじめてです。これに感想言ってくれた人は」
何だか、Hさんのツボに入ることを言ってしまったと思ったのと同時に
また、この手の話に触れてしまったか・・・と思ったりしました。
「今更ながら、これ、ご住職には、何に見えます?」
「何って空想の生き物、に見えますけど・・・違いますか、」
「なるほど・・・空想の生き物ねえ・・・」
「あ、あと、聖獣の様にも思えます、今ならUMAというか、
あの、坊主のクセになんだと思われると、思いますが、
私は個人的に、UFO、もUMAも信じているところがありまして、
何となく優しく包んでくれて、それが、こう、迫ってくるというか」
「成る程、聖獣ねえ・・・そうなのかも知れません」
「この手の不思議な生き物描いてても、表現が違って来るのですか、
何というか、その時の気持ちとか・・・」
「その時の気持ちというか、実物を思い出すんですよ」
「・・・ええ?」
「あれ、ご住職、UMA信じてるんですよね?」
「ええ、はい」
「これ、想像図じゃなくて、僕が見たままです」
ええええええええええええええええええええ?
この生き物を、実物を見た・・・
でた、やっぱり、また、この手の話だと思いました。
すいません。夜と朝のお勤めで、時間が空きました。
つづけます。
「最初は、僕が小さい頃、小学校1年くらいかな、妹が3歳とか、
あっ妹がいるんです。2つ年下なんですが・・・」
「はい・・・」
「その頃に、見たんです。ご住職、良いですかこの話して、」
「ええ、はい、」
「僕は、K県の田舎の町出身で、山じゃなくて海がすぐ近くにあって、
N県なんかは、海渡った方が近いんです。で、」
「はい」
私は、Hさんの説明で、何となく場所を想像しました。
「ある夏、妹を連れて海に行ったんです。
連れて行ったというか、家からすぐの海に出た、という感じですが、
昼過ぎ位かな・・・ちょうど、誰もいなくて僕達二人きりだったんです。
それで、まあ、遊んでたんです。
で、気がつくと、妹がいない。
焦りましたよ、独りぼっちで海辺にいるんですから、
家に勝手に帰ったんじゃないかとか、
そうは、思わなかったですね、
どうしようか、と動けないでいると、
海の、視野に入っている海と浜の端が曲がってというか、
割れて、そいつが現れたんです。
僕に近づいて来た、そして完全に僕の前に来た。
いや、大きかったですね、多分、大人の身長くらいに感じてました。
そして、尻尾から、妹が出てきた。
驚いているのに、いなくなった妹が出てきて、
ますます訳が、分からなくなっていると、
そいつが、何となく
安心しろ、大丈夫
って言ってる気がして、あわてて妹の手を引いたんです。
そしたら、空を見上げた風になって、
そのまま、ゆっくり、消えて行ったんです。」
私は、最早、一方的に聞いていました。
「それから、妹を連れてダッシュで家に戻って
母親に妹を預けて、忘れないように絵に描いたんです。」
「それが、この絵ですか・・・」
「いえ、この絵は、次に、今の所、最後に会った時のものです。」
「ええ?」
何で何回も会えるの?
思ってもない方向で、進んで行っちゃうよ・・・
と思っていると、
「ええって、思いますよね、
また会えるなんて
僕も思ってなかったですから・・・。
でも、折りにつけ描いてました。
この出来事を、夢とか、あったよなってことには
したくなかったんです。
だから、忘れないように描いてました。
そのせいで、小学校、中学校くらいは、
詳しくもないのに、怪獣博士って言われたり、
そうそう、次に会ったのは、
だいぶ大きくなってからなんです。
聞いて下さいね」
「はい」
何か、不安のカタマリと言うか、漠然とした不安というか、
そういうのに、滅茶苦茶、圧されて、
今思えば、精神的にもだいぶん、まいっちゃてる時だったんです。
仕事が、怖くなってて、
デザインするもの、描いたりするものが、
全部間違ってる様な、そういう時期だったんです。
で、ある日、仕事の資料で「ウルトラQ」って
子供向けドラマの、ある話を観たんです。
それは、モノクロで昔の漁港が映っていて、
実家の風景に観えたんです。
どういう感情か、涙が出て、自分で抑えられなくて、
漁港を走る子供が、自分の様な気がして、
何か分からないけど、じっとしてられなくなって、
時間は夜でしたし、自動車持ってないし、
バイクで実家に向かいました。
自動車のタイヤの跡って、自動車じゃ気が付かないですけど、
バイクだとモロで、うっかりすると、弾かれそうになるんですね、
でも、とにかく、実家の風景を見たい、
実家の風景に自分を当てはめたい、
そう思って、バイクで向かいました。
そんな感じで、着いたのは、
まだ夜は完全に明けてなくて、
少し、周りの風景が見える様な時間でした。
そのまま実家に近付くと、バイクの音で近所も含めて
起こしちゃうかもと思って、海沿いを少し走ろうと思いました。
その途中、懐かしい風景が見えて、
その中を走る自分が、優しい空気に包まれている様な感じになりました。
こう、優しい・・・何か例え辛いですけど、
僕を包み込んでくれる、様な感じとでもいうか、
さっきまでの感覚が、小さく思える様な、
そんな感覚になって、海沿いを走ったんです。
で、急に喉が渇いたんで、自販機に向かいました。
コンビニなんて、近くになくて・・・。
で、自販機にバイクを止めると、前に広がる、
もう見えている海に向かって歩き出しました。
誰も周りにいない、この時は僕の為にある時間だと思えたら、
また、涙が出ました。
そしたら、視界の端っこが割れて
これが、出て来たんです」
こんな話は、普通聞いたら信じる人は少ないだろうな、
でも、何で初対面に近い、私に話すんだろう?
そう思っていると
「じゃ、続きです、ラストです」
とHさんが、話を再開されました。
分かりませんが、そういう感じなんです。
で、現れたんです。
まだ明けきっていない薄暗い、K県の浜に、それが現れた、
びっくりです、びっくりなんですが、
僕はどこか、これに会えるのも、期待というか分かってた気がしました。
まあ、兎に角、これが現れてくれた。
僕は、すぐ声を掛けました。
「久しぶり、俺のこと、覚えてる?」
こいつは、犬みたいな動作、伏せをしました。
こういう風に、頭を下げて、
僕は物凄く嬉しくなって、抱きついたんです。
そこから、急に記憶が飛ぶんです。
真っ暗な中で、声がしたような覚えがあるんです。
心配いらない
でも
辛いことが迫ってる
でも
あなたは大丈夫
その声というか、メッセージが残っていて、
はっと、して目が覚める、というか気が付くと、
あいつは、このポーズをして、
明けかけの朝の海に、消えて行ったんです。
こう、段々薄くなるというか・・・
それだけです。
何なのか、正体とかなんかも分かりません。
同じ様な、聖獣いないし。
でも、あの温かさというか、温もりが僕には残ってる
だから、独立もしたし、結婚もした。
子供も出来た、教室も開いた。
なんか、自分がやってる事は、間違いじゃない、安心していいんだ、みたいな。」
Hさんが、話をする為に、前のめりになっていた姿勢に気づいて戻しながら、
「こういう話なんです、オチも教訓じみたところも、ありません。
長々とすいませんね」
と言いながら、
「けど、不思議です、こんな話を、一気にご住職にするとは・・・
充分、ヤベエ奴ですよね、すいません。
でも、初めてなんです、こいつの絵に質問して下さる方は・・・」
Hさんの話が、私の想像を超えていたので、主要なところを再度お聞きし、
許可を得て、その「聖獣」の絵の写真を撮らせて頂きました。
そして、自分の体験を体験談として話すということの大切さを、
分からされた、気がしました。
これがきっかけで、Hさんとは、よく話をする仲になりました。
2018年の暮夏のことでした。
今回のこの行為も許可を頂きました。
2020年の今年になって、あの妖怪の話にも似てると思いました。
まだまだ、コロナ禍は治まりませんし、
冬場の過ごし方も去年とは違うと思いますが、皆様お気を付け下さい。
合掌
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