死ぬ程洒落にならない話を集めてみない? PART10
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もう何年も前になります。
当時、私は学生で、同じ学校に通う彼氏がいました。
付き合い始めて1年くらいたった頃、ほんの思いつきで2人で軽井沢へ旅行に行く事になりました。
その頃は3月、出発するその日は東京都心でもかなりの雪が降っていましたが、
お互いなかなか旅行に行く暇が作れなかったため、やむなく出発しました。
恋人同士の初旅行、しかも何かと経済的という事もあり、車で移動する事になりました。
東京を離れるごとに雪は強くなり、軽井沢につく頃には雪の中に足を踏み入れると
膝まですっぽりと埋まるくらいの積雪になっていました。
タイヤにチェーンを装着しましたが、これ以上山深く入っていく事は危険だと思い、
どこか適当な所で車を止め、取り敢えずその日の宿泊先を探す事にしました。
ちょうど春休みのシーズンにも拘らず、私達は当日に観光ガイドを頼りに宿を探すという無謀さで、
案の定どこの宿も満室、軽井沢中心部にある宿は全て断られていました。
仕方なく、軽井沢からは少し離れた市街地にある宿にしようという事になり、
観光ガイドのリストに記載されている宿を上から順にあたっていきました。
結局、なかなか空室のある所は見つからず、リストもあと数件の宿しか残っていないという時になって、
焦りながら電話したある宿でこういうやり取りになりました。
続く
「そちらの宿に、今晩2人用の部屋はまだ空いていますか?」
「えー、申し訳ございませんが、只今満室でして・・・・」
「そうですか、分かりました。」
「あ、少々お待ち下さい・・・(数十秒後)午後7時以降でしたら、一部屋ご用意する事ができますが、
いかがなさいますか?」
この電話をかけているのは午後3時頃、まだその時間までかなり余っていましたが、
ここを逃せばもう他はないと思い、藁にもすがる思いで予約をお願いしました。
その後、あまり雪の強く降っていない所を選び、約束の時間になるまで適当に時間を潰しました。
午後7時前、到着したその宿は、観光ホテルとビジネスホテルを足して2で割ったような感じのところで、
恋人同士の初旅行にはお世辞にも向く所ではありませんでしたが、そんなわがままは言っていられません。
ギリギリで見つかったその宿でチェックインをしようとした所、まだ部屋の準備が終わっていないとの事で、
私達は「7時でも遅いくらいなのにまだ準備出来てないんだねー」
と身の程知らない愚痴をこぼしながら20分程待ちました。
案内された部屋に荷物を置き、その夜一晩お世話になるこの部屋を
物珍し気に見回っていましたが、ふと気がついた事がありました。
続く
私達に用意された部屋は小さめのツインの部屋、二つのベットの間には細い通り道があり、
一方のベットは壁際に、もう一方は窓に面した壁際10cm程を残して置かれていました。
窓の外は下の階の屋根がバルコニーのようになっており、ベットの向こうにテレビ
、その横には小さなドレッサーがありました。
何気なく部屋を見渡してみると、ベットがぴったりとつけられた壁のちょうど目線の先に、
500円玉大の茶色がかったシミが何ケ所か、
壁紙の下から浮き出るように付いているのに気が付きました。
冗談まじりに「なんかこのシミ、血の色みたい。血って、時間がたつとこういう色になるもんね」
などと言い合っていました。
2、3時間程たった頃でしょうか、私はベットに腰掛け、
彼氏はドレッサーの椅子に座ってお酒を飲んでいました。
何かの拍子にそのドレッサーの鏡が動いてしまい、裏にある壁を見た所・・・
そこにはベット際の壁にあるシミと同じものが、ベットリと付いていました。
そしてよく床を見ると、うっすらと茶色いシミが拭いても拭き取れなかったように
無数の点々となって染み付いているのです。
お茶などをこぼした時のシミとは明らかに違うんです。
点々と滴るように。
その瞬間、二人とも背筋が寒くなり会話も途切れてしまいました。
なるべく気にしないよう努めていたのですが、テンションも下がってしまい、
早々に床に就く事になりました。
私は窓際に置かれたベットで眠る事になり、雪の様子を見ようと窓に引かれたカーテンをめくると、
なんとそこにはあの茶色いシミが、ダラッと窓枠から垂れ下がるように付いているではありませんか。
さすがにこれは横で眠ろうとしている彼氏に言えば怖がるだろうと思い、黙ってそちら背を向け、
恐怖を押し殺すように布団をスッポリかぶっていました。
そうしているうちに私も眠ってしまったようで、次に気が付いた時にはもう朝になっていました。
すいません、まだ続きます。
チェックアウトを済ませ、昨日とは打って変わって雪も止んだ軽井沢を廻り、東京へ帰って来ました。
途中、お腹が空いたのでファミレスに寄る事にしました。
そこで彼氏が深刻そうな面持ちであの部屋のシミに付いて話を切り出して来ました。
「壁のシミ、見たでしょう?血の色みたいで気持ち悪いと思ってたんだよね。
話題にならないように気をつけてたんだけど、どう思った?」
「うん、私も血じゃないかと思った。でも、まさかそんな部屋に泊まらせないでしょう。
違うんじゃないの?」
本当は私もあれが血ではないかと思っていましたが、恐がりな彼氏でしたのであえて否定しました。
すると彼氏が、
「実はあの夜、夢を見たんだ。俺、普段滅多に夢なんて見ないんだけど。
その夢が凄く無気味なんだ。カラーで音が全く無いんだよね。
それで、どんな内容かって言うと、あの部屋に俺がいるの。
いるって言っても天井から部屋を見下ろしている感じなんだけど。
その部屋で中年のおじさんが女子高生を包丁でメッタ刺しにしてるんだよ。
女子高生が逃げ回って、あのシミが付いていた所に血まみれの手形をつけながら。
殺された女子高生は、あの窓から運ばれるんだ。
恐くて今まで話さなかったけど、どうしても気になって。」
「実は私、その窓の下にダラッと垂れているシミ、見ちゃったんだ」
「・・・・」
それから1ヶ月程たった頃でしょうか。
あれ以来、これといって変わった様子もなく私達は過ごしていたのですが、
ある日、彼氏の方が真っ青な顔をしてこう言い出しました。
「俺、霊とか信じないんだけど、あの夢がどうしても気になってあれからずっと図書館で
新聞のバックナンバー調べてたんだよ。
あのホテルで何かあったんじゃないかと思って。そうしたらさ、昨日、見つけたんだ。
ホテルの名前は違うけど、住所があのホテルだと思うんだ。
俺たちが泊まったホテル、もう何年も前になるけれど、中年の男が若い女の子を殺した事件があったんだ。
小さな記事で顔写真もないんだけど、多分俺が見た夢ってその事件じゃないのかなって」
彼氏が見た夢って、一体なんだったんでしょう。
彼氏が見たあの夢以外、特に何もなかったのが幸いです。
終わりです。長文スマソ。